そもそも「修繕積立金」って何?十数年ごとの大きな修理(外壁の塗り直し、屋上の防水など)のために、部屋の持ち主みんなで毎月ためておくお金。管理費とは別に払います。もっと詳しく →は、買った時の金額がずっと続くとは限りません。「買ったあとに上がったら、どうしよう」と心配な人も多いと思います。
ここでは、修繕積立金がなぜ上がるのか、値上げの予定はどこで分かるのか、買う前にどう考えておけばいいのかを書きました。
1. 修繕積立金は、あとから上がる⁉️
マンションは、年数がたつほど傷むところが増えます。外壁や屋上の防水、給水管など、直すところも、かかるお金も増えていきます。そのため、修繕積立金は、あとから上がることがあります。

それに、工事の値段そのものも変わります。国のガイドラインでも、工事費の高騰などで実際の修繕の費用は変わるので、5年くらいごとにそもそも「長期修繕計画」って何?「何年後に、どこを、いくらかけて直すか」をまとめたマンションの修理の予定表。これを見ると、今の積立金で足りそうかを考える材料になります。もっと詳しく →を見直して、修繕積立金を決め直すことが必要とされています。見直しで、値上げが必要になることもあります(出どころ:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定)。
新築の時に安く始めて、あとで大きく上げる決め方について、国も目安を出しています。2024年6月に、「段階的に上げていく決め方なら、はじめの額は、長期修繕計画の期間全体でならした月額の0.6倍以上、一番高い額は1.1倍以内に」という考え方を出しました(出どころ:国土交通省「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」令和6年6月)。法律の決まりではなく、国のガイドラインに入れた目安です。

「長期修繕計画を最後に見直したんは、いつですか?」も聞いとこ👍
2. 「中古の方が新築より高い」は、おかしなことではない
物件を見ていると、築年数がたった中古マンションの方が、新築より修繕積立金が高いことがあります。これは、そんなに不思議なことではありません。
新築の時は建物も新しいので、すぐに大きな修理が要るわけではありません。でも、12〜15年くらいたつと、外壁や屋上の防水などの大きな修理が来ます(出どころ:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」令和6年6月改定。「一般的に12〜15年程度」)。そのお金は、新築の時から少しずつためておく必要があります。年数がたって直すところが増えれば、ためておくお金が増えるのは自然なことです。
それに、新築の時は、修繕積立金を安くしておいた方が、月々の支払いが軽く見えて売りやすい、という事情もあると思っています。はじめを安くしておいて、あとから上げていくわけです。
国のガイドラインにも、分譲の時に「修繕積立金のはじめの月額が、とても低く決められている例も見られる」と書かれています(出どころ:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定)。
なので、「中古やから積立金が高くて損」という見方は、少し違うと思っています。

高いか安いかだけで決めない。これから必要な修理に対して、ちゃんとお金をためられているかを見る。
3. 今が安くても、安心とは限らない
安いマンションほど、見てほしいところがあります。
実際に物件を見ていて多いのは、「安すぎる」より「ちょっと高いな」の方です。それでも、今の修繕積立金が安いマンションは、少し気をつけて見てほしいです。年数がたって直すところが増えるのに、積立金が安いままだと、「この金額で、ほんまに足りるのかな?」となるからです。
今の月々の額だけを見るのではなく、長期修繕計画で、これからどんな工事の予定があって、それに対して積立金が足りる計画になっているかを見るのがおすすめです。

「長期修繕計画、見せてもらえますか?」この一言でええ👍
4. 値上げの予定は、どこで分かる?
値上げの予定を確かめるなら、次の3つを見るのがおすすめです。
- 長期修繕計画:これからの工事の予定と、修繕積立金をいつ・いくらにするかの予定
- 重要事項調査報告書:管理会社が出す書類。積立金の残高や、値上げの予定が書かれていることが多いです
- そもそも「総会」って何?マンションの部屋の持ち主が集まって、管理組合の大事なことを決める会議。修繕積立金の額や、長期修繕計画もここで決めます。もっと詳しく →の議事録:そもそも「管理組合」って何?マンションの部屋の持ち主みんなで作る集まり。建物の手入れや、修繕積立金の使い方を決めます。もっと詳しく →の話し合いの記録

中でも、総会の議事録は見てほしいところです。まだ正式に値上げが決まっていなくても、「修繕積立金を見直さなあかん」という話が出ていたり、具体的な金額まで話し合われていたりすることがあります。
今いくら払っているかだけでなく、管理組合の中で、今どんな話が進んでいるかまで見ておくと安心です。資料は、仲介の不動産屋さんに頼むと見せてもらえることが多いです。
頼むのは、ある程度「ここええな」と目星がついてからで大丈夫です(「中古マンションの修繕積立金、どこを見る?」の2番)。
5. 値上げが決まっているマンションは、やめた方がいい?
値上げが決まっているだけで、「このマンションはやめた方がいい」とは限りません。大事なのは、なぜ上げるのかです。
これから必要な修理に備えて、ちゃんと計画を立てて積立金を上げるのなら、管理組合が将来のことを考えて動いている、とも見られます。
むしろ気をつけたいのは、「安いけど、この先ほんまに足りるの?」という状態です。

値上げの有無より、なぜ上げるのか。計画にそった値上げなら、将来を考えて動いているサインにもなる。
6. どれくらい上がる? 月々の支払いは、値上げのあとの金額で考える
まず、計画ではどれくらい上がる予定になっているかです。国が、30年の計画で5年ごとに4回上げていくマンション(20階未満・56件)の長期修繕計画を調べたところ、計画の最後の年の修繕積立金は、はじめの約3.7倍の予定になっていました(出どころ:国土交通省「管理・修繕に関するテーマの検討」資料。予備認定マンションの長期修繕計画から作成)。
たとえば、はじめが月8,000円の計画なら、計画の最後の年には月3万円くらい(8,000円×3.7=29,600円)になる予定、という計算です。
ただし、これは56件の「計画の上での予定」です。すべてのマンションで、実際にこれだけ上がった、という結果ではありません。また、中古マンションを買う人は、この計画の途中から入ります。築15年のマンションなら、もう何回か上がったあとのこともあります。反対に、1番で書いたように工事費が上がれば、見直しで計画より多く上がることもあります。なお、段階的に上げていく決め方のマンションは全体の47.1%、計画に比べてたまっているお金が足りないマンションは36.6%です(出どころ:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」)。
じゃあ、いくらと考えておけばいいのか。「何%くらい見込んでおけば大丈夫」とは、一律には言えません。マンションによって、築年数も、今の積立額も、これからの工事の予定も違うからです。
おすすめの考え方は、この順番です。
- 長期修繕計画を見て、この先いつ・いくらに上がる予定かを確かめる。予定があるなら、一番高くなる金額で計算する
- 長期修繕計画を最後に見直した年も見る。5年以上見直していないなら、見直しで、今の予定よりさらに上がるかもしれない、と考えておく
- 今の修繕積立金を広さで割って「1㎡あたり月いくら」にし、国の目安と比べる。目安よりかなり安いなら、長期修繕計画や値上げの予定を、より慎重に確かめる(国の目安は「中古マンションの修繕積立金、どこを見る?」の1番)。ただ、この比べ方で将来いくらになるかは分かりません。どうしても確かめられない時は、「この先いくらになるかは、まだ分からない」ということなので、確かめられるまで買うかどうかの判断は急がない
- 上がったあとの金額で、住宅ローンやそもそも「管理費」って何?マンションを毎日きれいに、安全に保つために毎月払うお金。掃除、管理人さん、エレベーターの点検、廊下の電気代などに使われます。もっと詳しく →も含めた毎月の支払いを計算し、無理なく払えるかで決める

「この先、積立金はいつ・いくらに上がる予定ですか?」って聞いてみて‼️
7. 買ったあとに値上げの話が出たら、断れる?
先に答えを言うと、総会で値上げが決まったら、反対した人も払うことになります。「自分だけ払わない」はできません。払わなければ、そもそも「滞納」って何?払うお金を、決まった日までに払っていないこと。マンションでは、管理費や修繕積立金の払い遅れのことです。もっと詳しく →になります。

総会で決まったら「わし聞いてへん」は通らへんで🙅
決まり方は、マンションごとの管理規約で決まっています。国が管理規約のお手本として出している「マンション標準管理規約」では、こうなっています。
- 修繕積立金の額は、管理組合の総会で決めます(出どころ:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」令和7年10月改正・第48条)
- 議決権の過半数を持つ人が出席した総会で、出席した人の議決権の過半数の賛成があれば決まります。書面や代理人で票を入れた人も、出席に数えます(出どころ:同 第47条)
- 総会で決まったことは、あとからその部屋を買った人にも効きます。買う前に決まっていた値上げも、そのまま引き継ぎます(出どころ:建物の区分所有等に関する法律 第46条)

ただし、管理規約の中に修繕積立金の金額そのものを書いているマンションでは、変えるのに管理規約の変更が要り、もっと多くの賛成が必要なこともあります。どれだけの賛成が要るかは、管理規約で確かめてください。管理規約は、買う前に仲介の不動産屋さんに頼めば見られます。
持ち主としてできるのは、総会に出て意見を言い、賛成・反対の票を入れることです。「なぜ上げるのか」「長期修繕計画ではどうなっているのか」の説明を求めることもできます。国の資料には、実際の総会で「値上げの根拠がわからない」「マンション販売時には、積立金は値上がりしないと聞いた」という声が出た例も載っています(出どころ:国土交通省「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方について」)。
だからこそ、買う前から「今の修繕積立金がずっと続く」と思ってお金の計画を立てないことが大事です。マンションに長く住めば、建物は古くなり、修理も必要になります。

値上げは総会の多数決で決まり、決まったら全員が払う。買う前に、上がったあとの金額でも払えるかを確かめておく。
まとめと、次にやること
修繕積立金は、上がることがあるものです。大事なのは、上がるか上がらないかより、これからの修理に足りる計画になっているかです。
- 年数がたつと直す所が増え、工事の値段も変わるので、修繕積立金はあとから上がることがある
- 中古の方が新築より高いのは、おかしなことではない
- 値上げの予定は、長期修繕計画・重要事項調査報告書・総会の議事録で確かめる
- 値上げがあるだけで、やめる必要はない。大事なのは、なぜ上げるのか
- 月々の支払いは、値上げのあとの金額で考える
- 総会で決まった値上げは、反対した人も払う
気になる物件が見つかったら、次の順で動いてみてください。
- 仲介の不動産屋さんに「長期修繕計画、見せてもらえますか?」と頼む
- 「この先、積立金はいつ・いくらに上がる予定ですか?」と聞く
- 総会の議事録で、値上げの話が出ていないかを見る
- 一番高くなる金額で、住宅ローンや管理費も入れた毎月の支払いを計算する
- 建物そのものの古さが気になったら、「築40年でも大丈夫? 新耐震・旧耐震は『完成年』だけでは分からない」へ


