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マンションの音、どこまで聞こえる? 足音・話し声・外の音は、別のものです

公開 暮らす

中古マンションを見に行って、部屋の中は静かだった。それでも、こう思う人は多いと思います。

「住んだら、上の階の音って聞こえるんやろか」

先に結論を書きます。音は、種類で分けて考えると分かりやすくなります。足音、話し声、外の車の音。この3つは、伝わり方も、対策も、全部ちがいます。

そしてもうひとつ。図面やスペックだけでは、住んだときの音は分かりません。これは僕の感覚ではなく、国の資料にそう書かれています。

この記事では、音の種類の分け方と、内覧でできること、リノベでできること・できないことを書きます。

僕は中古マンションを買い取って、直して売っています。リノベで床を張り替えるとき、管理規約の遮音の基準を守る側にいます。ここでは、そこで見ていることと、国の資料に書かれていることを分けて書きます。

音の性能については、体感だけで決めつけずに、構造や床の仕様、壁の作りなんかを見て判断する方がええと思う

👀 ここだけ見て

この記事で覚えて帰ってほしいのは2つ。①音は「足音」「話し声」「外の音」で分ける。まとめて考えると、対策もまとめて外れます。②図面では、できあがりの音は分からない。最後は自分の耳で聞く。

1. 音は「種類」で分けると、話が早い

マンションの断面で、音の通り道を3つに分けて示した図。上は上の階の足音で、子どもが2人、跳んだり走ったりしていて、音は床(コンクリートの板)を通って下の階へ伝わる。中は隣の家の話し声やテレビで、通り道は壁。下は外の車や電車の音で、通り道は窓
同じ「音」でも、通ってくる道がちがいます。道がちがえば、見るところも対策もちがいます。(押すと大きく開きます)

国土交通省の資料では、マンションの音がこう呼び分けられています。

共同住宅の界床が有している「足音(重量床衝撃音と言います。)物の落下音など(軽量床衝撃音と言います。)の伝わりにくさ」、界壁が有している「話し声など(空気伝搬音又は空気音と言います。)の伝わりにくさ」

(出どころ:国土交通省「住宅性能表示制度」解説 8.音環境に関すること)

言いかえると、こうです。

  • 上の階の足音。床(界床)を伝わってくる、ドスンという重い音
  • 物を落とした音・椅子を引く音。同じく床を伝わる、コツンという軽い音
  • 隣の家の話し声・テレビ空気伝搬音。壁(界壁)を通ってくる、空気を伝わる音

ここを分けずに「この部屋、音は大丈夫ですか」と聞いても、答えようがありません。どの音のことを心配しているのかで、見るところが変わります。

国の資料には、こう書かれています。

特に、子供の飛び跳ね音や走りまわり音がクレームの原因となるケースが多くなっています。

(出どころ:同上)

2. 図面では、できあがりの音は分からない

ここがこの記事でいちばん大事なところです。同じ資料に、こう書かれています。

界壁・界床・外壁に関する音の遮断性能については、現時点の科学的な知見の範囲では、反射、干渉、共鳴、共振などといった波動としての特殊な特性の把握が難しいことや、施工上の種々の誤差などがもたらす変化を把握することが難しいため、設計図書の段階で竣工時の遮音性能を正確に予測することは困難となっています。

このため、ここでは、完成した住宅室内で聞こえる音の実測結果について保証するのではなく、あくまでも設計図書の段階で予測ができ、かつ、判断のできる内容に置き換えて、表示方法および評価方法を設定しています。

(出どころ:同上)

つまり、国の制度でさえ「図面から、住んだときの音を正確には当てられない」と認めています。できるのは「対策がどれくらい講じられているか」を示すところまでです。

内覧だけで「このマンション絶対静かです」とは言い切れへん

だからこの記事では、「この作りなら静かです」とは書きません。見るところと、確かめ方を書きます。

3. 響き方を決めるもの

それでも、見て分かることはあります。

いちばん大きいのは構造だと思います。(コンクリートの床)が厚いほうが、一般的には重量床衝撃音には有利になりやすい。壁も、コンクリートの壁なのか、軽い下地に石膏ボードを張ったものなのかで、かなり変わります。

ただし、ここで止めないでください。

二重床やから絶対静か、直床やから絶対うるさい、みたいに単純には言えへん

これも、国の資料に同じ趣旨が書かれています。

同一の相当スラブ厚のものでも、他の条件の違いにより、重量床衝撃音の遮断性能が変わることがあるので注意が必要です。

(出どころ:同上)

床材や下地の仕様でも変わります。ひとつの数字や、ひとつの作りだけで決まるものではありません。

現場で見るなら、壁を叩いたときの感触、床の沈み方、部屋と部屋の間の壁の作り。このあたりを見ます。構造図や仕様書が見られるなら、スラブの厚さや壁の厚さも確かめたほうがいいと思います。

4. 内覧のときに、音を確かめる

ここが、この記事でいちばん実際に使えるところだと思います。

できれば、時間帯を変えて見てください。昼間だけでは分からない音があります。夕方や夜に行くと、上下左右の生活音、外の交通量、近所のお店の音が分かりやすくなります。

窓を閉めた状態と、開けた状態。両方で聞いてみてください。外の音と、建物の中の音を分けて聞けます。

立つ場所も変えてください。部屋の真ん中だけでなく、寝室や、隣の家との境の壁際でも、一度静かに立ってみる。

そして、僕がいちばん勧めたいのがこれです。

内覧ってどうしても喋りながら見るけど、30秒ぐらい黙って音を聞く時間を作るだけでも結構違うと思う

内覧は、だいたい誰かが喋っています。案内している僕たちも喋っています。すみません。だからこそ、意識して黙る時間を作らないと、音を聞く時間はゼロのまま終わります。

👀 ここだけ見て

内覧の途中で、30秒だけ黙ってみてください。できれば時間帯を変えて。窓を閉めたときと開けたとき。寝室と、隣の家との境の壁際。これだけで、聞こえてくるものが変わります。

5. 床の遮音は、直す側がこうやって守っています

ここからは、直す側の話です。

リノベで床を張り替えるとき、まず管理規約を確認します。マンションによって、床材の遮音性能に基準が決まっていることがあります。たとえば「LL-45相当」のような書き方です。

この「LL-45」は、さきほどの軽量床衝撃音のほうの話です。⚠ ただし、規約に書かれた数字は、そのマンションが「床材に求める基準」です。国の制度の等級(床ぜんたいで見る評価)とは、見ているものがちがいます。同じ数字に見えても、並べて比べないでください。

材料を選ぶときは、その基準を満たしている床材や下地材を使います。二重床にする場合も、脚のゴムや床下地の仕様で性能が変わります。管理組合に申請するときは、使う床材の商品資料など、遮音性能が分かる資料を出すことが多いです。

つまり、「見た目が好きな床材を選ぶ」だけでは決められません。そのマンションのルールを満たしているかを、先に見ます。

工事に管理組合の承認が要る話は、別の記事に書きました。

中古マンション、どこまで変えられる? 変えられる所と、変えられへん所

6. リノベでできること、できないこと

音の種類によって、対策が変わります。

  • 外の車や電車の音(空気伝搬音)… 内窓は効果を感じやすいと思います
  • 壁から聞こえる話し声(空気伝搬音)… 壁をふかして、中に吸音材や遮音材を入れる方法があります
  • 床から伝わる音 … 遮音性能のある床材、防振ゴムを使った二重床で対策できることがあります
  • 天井 … 下地を組んで吸音材を入れる方法はあります

外の音について、ひとつ足しておきます。国の制度にはサッシの遮音の等級(透過損失等級・外壁開口部)もあって、東西南北の方位別に評価することになっています。外に道路や線路があるなら、その向きの窓が効いてくるということです。(出どころ:同上)

内覧では、窓の向きと、サッシの種類を見ておいてください。⚠ ただし窓はで、自分では替えにくい所です。替えるなら管理組合の承認が要ります(どこまで変えられる?)。内窓は室内側に足すものなので、外の音には効きやすい方法です。⚠ 内窓も、付けるには管理組合の承認が要ることがあります。

ここまでが「できること」です。次が大事です。

上の階の足音のような重量床衝撃音は、下の部屋側だけで完全に消すのは難しい。音は壁だけでなく、梁や床など躯体を伝って回り込むこともあります。

「これやったら無音になります」みたいな言い方はせん方がええ

減らせる音は減らせる。でも構造上、限界がある音もある。そこは正直に言う

これは国の資料も同じことを書いています。

まず、設計・施工者側が…これらの音を伝えにくくするための工夫を講じることが重要です。しかし、それだけで完全に解決できる問題ではありません。居住者側も、上下左右に住戸が連なった建物に居住していることを認識し、自分が居住する共同住宅の遮音性能に見合った生活スタイルを実践することも必要です。

(出どころ:同上)

7. 等級では見ていない音もある

最後に、知っておくと落ち着ける話を2つ。

① 評価の対象になっていない音がある

共同住宅等で聞こえる音としては、給排水設備やエレベーターから発生するもの、扉やサッシ、襖などの開閉により発生するもの(いわゆる固体音)などがありますが、いずれも高い精度で予測を行うことや対策の効果を定量的に扱うことが難しい面があるため、評価対象としていません。また、比較的居住者の方の不満が少ない上下階からの話し声(空気伝搬音)の伝わりにくさについても取扱っていません。

(出どころ:同上)

水が流れる音、エレベーターの音、ドアの開け閉めの音。これらは等級では見ていません。気になるなら、内覧で自分で確かめるしかない音です。

住んでから気になる音が出たときも、同じです。まず「どんな音か」と「どこから来ているか」を確かめる。そこが分からないまま対策をしても、外れます。

② そもそも、音は評価を受けていないこともある

住宅性能表示制度の中で、音環境は「選択事項」です。

「選択事項」とは、性能表示基準に定める性能の事項のうち、指定住宅性能評価機関による評価申請の際に、評価を受けるかどうかを申請者の判断にゆだねる事項のことです。

(出どころ:同上)

つまり、音環境の評価を受けていない住宅もあります。「等級が無い=音が悪い」ではありません。その項目の評価を受けていない、ということです。

まとめ

  • 音は種類で分ける。足音=重量床衝撃音、物の落下音=軽量床衝撃音、話し声=空気伝搬音。伝わり方も対策もちがいます
  • 図面では、できあがりの音は分からない。国の資料も「設計図書の段階で竣工時の遮音性能を正確に予測することは困難」と書いています
  • スラブが厚いほうが有利になりやすい。ただし、それだけでは決まりません。同じスラブ厚でも、ほかの条件で変わります
  • 床を張り替えるときは、まず管理規約。「LL-45相当」のような基準が決まっていることがあります
  • 減らせる音は減らせる。でも、構造上の限界もある。とくに上の階の足音は、下の部屋側だけでは消しきれません

次にやること

買う前に一回、静かに聞いてみる

👀 ここだけ見て

気に入った物件が見つかったら、時間帯を変えてもう一度見に行ってください。できれば夕方か夜。窓を閉めて、喋るのをやめて、部屋の中で30秒だけ音を聞く。図面もスペックも大事ですが、音は最後、自分の耳で確かめるしかない部分があります。

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