内覧の時間は、そんなに長くありません。その中で何を見ればいいのか。先に答えを書きます。持っていくのはメジャーとスマホ。見るのは、部屋の「端っこ・奥・裏」と、部屋の外(そもそも「共用部」って何?マンションの中で、住んでいる人みんなで使う場所。エントランス、廊下、エレベーター、ゴミ置き場、駐輪場などです。もっと詳しく →)。そして、あとから自分で変えられない所です。
きれいなキッチンや新しいクロスに目がいきますが、見るところはそこではありません。
この記事では、二級建築士・宅建士で、実際に中古マンションを直して売っている浅野が、内覧で見ているところをそのまま書きます。持ち物と、当日そのまま使えるチェックリストも付けました。

内覧で大事なのは、「きれいな所を見る」より「あとから自分で変えられへん所を見る」こと。部屋の中は、あとから直せます。建物の管理や周りの環境は、自分ひとりでは変えられません。
1. 見るのは「あとから変えられない所」
内覧に行くと、どうしても目立つところに目がいきます。新しいキッチン、白いクロス、明るい照明。でも、そこは買ったあとでも直せるところです。
直せないもの、直しにくいものから見ていきます。
- 自分ひとりでは変えられない:建物の管理の状態、まわりの音や環境、日当たり、上下左右の部屋、マンションのルール(ルールを変えるには、総会で4分の3以上の賛成が要ります。出どころ:区分所有法 第31条)
- お金と時間をかければ変えられる:床、壁、設備、間取りの一部
- すぐ変えられる:照明、カーテン、家具


新品のキッチン見たらテンション上がるのは分かる😄 けど、家はキッチンだけでできてへんからな
この順番で見ると、限られた時間の使い方が変わります。
2. 持ち物は2つ。でも、その前にやることがあります
僕が内覧に持っていくのは、メジャーとスマホの2つです。
- メジャー:冷蔵庫は入るか、ソファは置けるか、ベッドは入るか。その場で測れます
- スマホ:写真も動画も撮れます。暗いところはライトになります。収納の奥や、洗面台の下を照らすときに使います
ただし、行く前に、今使っている家具と家電の寸法をメモしておいてください。メジャーを持っていても、比べる相手の数字がなければ、測った意味がありません。
メモしておくとよいもの:冷蔵庫(幅・奥行き・高さ)、洗濯機(幅・奥行き)、ソファ、ベッド、ダイニングテーブル、大きい棚。
スマホで撮るときは、部屋ごとに1枚「どの部屋か分かる写真」を撮ってから細かい所を撮ると、あとで見返した時に分からなくなりません。売主さんが住んでいる場合は、撮ってよいか先に聞いてください。
3. 部屋の中は「端っこ・奥・裏」を見る
部屋の中を見るときのコツは1つです。表面ではなく、端っこ・奥・裏を見る。傷みは、見えにくいところから出てきます。
水まわり:扉を開けて、下をのぞく
キッチンや洗面台は、扉を開けて下の配管のまわりを見ます。見るのは、水が染みたあと、湿気、変なにおい。この3つです。
お風呂や洗面所は、コーキング(=タイルや浴槽のまわりを埋めている、ゴムのような白い部分)のカビも見ます。
窓まわり:ガラスではなく、サッシの下と窓枠
窓は、ガラスよりもサッシの下のレールと、窓枠を見ます。結露が多い部屋だと、黒ずみやカビのあとが残っていることがあります。
収納:開けて、奥の角を照らす
押し入れやクローゼットは、開けて、奥の角と、外壁側の面を見ます。スマホのライトの出番です。

表面より、端っこ・奥・裏を見る感じかな🔦
4. 動かしてみる、歩いてみる
見るだけでは分からないことがあります。内覧では、遠慮せずに動かしてみてください。
- 建具(=ドアや引き戸):実際に開け閉めします。引っかかる、閉まりきらない、音がする。動かさないと分かりません
- 床:ふつうに歩いてみます。沈む感じや、違和感がないか
- コンセントの位置:数だけでなく、位置を見ます。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、スマホの充電。家具を置いたときに使えるかどうかまで想像します
コンセントは、あとから増やすこともできますが、工事とお金がかかります。内覧のときに気づけると、あとの計画が立てやすくなります。
5. 部屋を出て、建物を見る
ここが大事です。部屋の中はリフォームできますが、共用部(=廊下やエントランスなど、みんなで使うところ)は、自分ひとりでは変えられません。
見るのは、建物そのものの豪華さではありません。住んでいる人と管理の様子です。
- 廊下:私物がずっと置きっぱなしになっていないか
- ゴミ置き場:荒れていないか、分別されているか
- 掲示板:トラブルや注意書きが、たくさん貼られていないか
- 駐輪場:自転車が倒れたまま、ぐちゃぐちゃになっていないか
- 郵便受け:チラシがあふれている部屋が多くないか

ひとつひとつは小さなことです。でも、いくつも重なると、そのマンションの管理の状態や、住んでいる人の雰囲気が見えてきます。

部屋の中はリフォームできるけど、共用部は自分ひとりでは変えられへんからな
6. 内覧中に聞くこと
内覧には、たいてい不動産屋さんが一緒に来ます。せっかくなので、その場で聞いてください。

わしやったら、「あとから自分で変えられへんこと」を聞くかな
- 音:上下左右の部屋のこと。どんな家族が住んでいるか、音の相談が出たことはあるか
- 水もれ:過去に漏水があったか。あったなら、どこを直したか
- そもそも「大規模修繕」って何?外壁の塗り直しや屋上の防水など、マンション全体の大きな修理。長期修繕計画にそって、何年かおきに行います。もっと詳しく →の予定:前回はいつ、次はいつの予定か
- そもそも「修繕積立金」って何?十数年ごとの大きな修理(外壁の塗り直し、屋上の防水など)のために、部屋の持ち主みんなで毎月ためておくお金。管理費とは別に払います。もっと詳しく →:今いくらで、上がる予定があるか
- ルール:駐車場・駐輪場の空き、ペットを飼えるか、リフォームの制限
ルールは、マンションごとの決まり(管理規約・使用細則)で決まっています。国が出しているお手本(マンション標準管理規約(単棟型))では、部屋の中のリフォームでも、共用部分や他の部屋に影響が出そうなものは、先に申請して書面で承認をもらう形になっています(出どころ:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第17条)。ペットや駐車場の決まりも、同じようにマンションごとです(同 第15条、ペット飼育の規定例)。
その場で全部は分かりません。買うと決める前に、そもそも「重要事項説明書」って何?家を買う契約の前に、不動産屋が買う人に説明しないといけない大事なことをまとめた書類。略して「重説(じゅうせつ)」。もっと詳しく →で必ず確かめます。内覧で聞くのは、その前の「気になることを拾う」段階です。
7. リノベ済みの部屋は「どこまで直したか」を聞く
きれいに直してある部屋(リノベ済み)は、見ためではほとんど差が分かりません。見えるところが新しくなっているぶん、元がどういう状態だったのかが見えにくくなります。
新しいクロスを見ても、その裏がどうだったかまでは分かりません。だから、聞くのは「何を直したか」ではなく、「どこまで直したか」です。
- 配管(給水・排水)は交換したか。そのままか
- 床は、表面だけ張り替えたのか。下地(=床材の下にある、床を支える部分)からやり直したのか
- 給湯器は交換したか
- 逆に、そのまま残しているところはどこか
表面だけきれいにした部屋と、中までしっかり直した部屋は、写真では同じように見えることがあります。分かる範囲で聞いてみてください。その場ですぐ分からないときは、工事の内容が分かる書類が残っているか聞きます。
8. 何回、いつ行けばいい?
できれば2回見られるとよいと思います。1回目で「ここはけっこういいな」と思って、買う可能性が高くなったら、もう一度見る。この形です。
そして、時間帯を変えてみてください。
- 昼間:日当たりが分かりやすいです
- 夕方や夜:まわりの音や、みんなが帰ってくる時間の雰囲気がつかめます
ただし、人気のある物件だと、何回も見ている間に売れてしまうこともあります。1回で決めるのが悪い、とは思いません。
1回で決めるんやったら、その1回をできるだけ濃く見るのが大事や‼️
まとめ
- 内覧で見るのは、きれいな所ではなく「あとから自分で変えられない所」
- 持ち物はメジャーとスマホ。行く前に、家具と家電の寸法をメモしておく
- 部屋の中は端っこ・奥・裏(水まわりの下、サッシの下、収納の奥)
- 建具は開け閉めし、床は歩く。コンセントは位置まで見る
- 部屋を出て、廊下・ゴミ置き場・掲示板・駐輪場・郵便受けを見る
- 聞くのは音・水もれ・大規模修繕・修繕積立金・ルール
- リノベ済みは「どこまで直したか」を聞く
- できれば2回、時間帯を変えて。1回で決めるなら、その1回を濃く
次にやること
- 行く前:今の家具と家電の寸法をメモする。メジャーをかばんに入れる
- 当日:上のまとめを、そのままチェックリストとして使う。気になったところはスマホで撮る
- 帰ってから:写真を見返して、気になったことを書き出す。不動産屋さんに、その場で聞けなかったことを聞く
- 買うと決める前:重要事項説明書で、お金とルールを必ず確かめる。修繕積立金の見方は「中古マンションの修繕積立金、どこを見る?」に書きました
建物の古さが気になるときは、「築40年でも大丈夫? 新耐震・旧耐震は「完成年」だけでは分からない」もあわせてどうぞ。


